ランちゃんの家出(後編)

 少し肌寒くなってきたでしょうか。辺りはだんだんと夕闇に包まれていきます。


 
 「ランちゃーん、ランちゃーん」と、人目もはばからず大きな声で叫んでみましたが……何の反応もありません。マンション前の道路を行き交う人々が振り返るだけです。
 


 当時住んでいた賃貸マンションは、1階がオーナー宅となっており、私の部屋はその2階にありました。自室のベランダのちょうど真下がオーナー宅の庭でした。
 


 落ちてもまだ2階からだったというところに救いはありました。野良猫ほどではありませんが、あれだけ俊敏な動きを見せるランちゃんです。この程度の高さから落ちて怪我をするとは考えられません。
 


 落ちた瞬間パニックになって、物陰に隠れた可能性が高いのではないでしょうか。しかし、そうはいっても、いつベランダに出たのか、いつ落ちたのか、まったく見当もつきません。午前中に落ちていたなら、もう6時間以上が経過していることになります。



 当時付き合っていた彼女(=現在の妻)の悲しむ顔が浮かびました。すぐに彼女に連絡をとりました。絶句。一気に重苦しい雰囲気になりました。私も始発で向かうと言い出す始末。まずは私が捜索するからとなだめて電話を切りました。



 もう外は真っ暗です。私は懐中電灯を手に持ち、捜索を開始しました。1階のオーナー宅の庭に無断侵入。どうやらオーナーは不在のようでした。薄暗い庭を呼びかけながら、探していきます。



 しかし、庭を歩きまわりながら、「ランちゃん! ランちゃーん!」と何度も呼びかけますが、反応が全くありません。この庭より外に出てしまったとすると、もう二度と会えないかもしれません。不安で押しつぶされそうです。



 もうだめかもしれないと弱音をはきそうになった、そのとき、「あぉーん」と小さな声が聞こえた気がしました。うん? 「ランちゃん?」と、私は再度呼びかけました。「にゃあぉーん」……間違いありません。ランちゃんの声です。



 物置の下から、ランちゃんの声が聞こえるのです。とにかく無事が確認できて、私は安堵しました。しかし、どうやってこの物置から引っ張りだすのか。



 物置はかなりの大きさです。頭を土につけて、物置下をのぞいてみました。懐中電灯を照らすと、いました。ランちゃんです。腹ばいになって、懸命に手を伸ばしてもぎりぎり届きません。私は何度も何度もランちゃんの名前を呼びました。しかし、よほど怖い思いをしたのでしょう。呼びかけに応えはするものの、一向に出てくる気配はありません。



 そのままずっと腹ばい状態。1時間以上は経過したでしょうか。ようやくランちゃんが近づいてきてくれました。何度か試行錯誤を繰り返した後、最終的には前足を引くようにして、物置下から引っ張り出しました。そのまま肩まで駆け上がるランちゃん。まだ目がらんらんとしています。ランちゃんを強く抱きしめたまま、2階の自室まで帰りました。



 大冒険をしたランちゃんですが、帰宅後すぐに爪とぎに向かいました。そこでストレスを存分に発散したことは言うまでもありません。本当に無事でよかった。


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